国際交流
国際交流・海外医療協力活動
2023年
中国・北京にある中国リハビリテーション研究センター(CRRC)では、本学に留学して日本の理学療法士、作業療法士の国家試験に合格した卒業生が現在多数活躍しています。また、中日友好病院と本学は医療協力協定を締結しています。
7月28日~30日、本学視察団は、本学と縁の深いCRRCおよび中日友好病院、さらに北京大学医学部の視察と、国際医療福祉大学中国支部同窓会出席のため北京を訪問しました。(視察団メンバー:国際医療福祉大学成田キャンパスの西田裕介成田保健医療学部学部長、谷口敬道作業療法学科長、倉智雅子言語聴覚学科長、福岡国際医療福祉大学の高木邦康常務、森田正治理学療法学科長、丹羽敦作業療法学科長)
今回の訪問を通じ、これまで長く続いてきた本学と中国各施設との協力関係を礎に、今後より一層連携を強化していくことを確認しました。
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中日友好病院の宋書記と本学視察団
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CRRC視察
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同窓会で挨拶する高木常務
高木邦格理事長、鈴木康裕学長が、2023年7月にブータン、タイを訪問しました。ブータンでは、王立公務員委員会と本学医学部奨学生受け入れのためのMOUを締結したほか、ブータン王立医科大学との学術協定も締結しました。タイでは、国立マヒドン大学との学術協定を締結しました。
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ブータン教育省にて
タイ・国立マヒドン大学との学術協定締結
7月9日に日本を出発し、タイ・バンコクに到着した高木理事長、鈴木学長は、7月10日、国立マヒドン大学を訪問し、学術協定を締結しました。本学医学部生の海外臨床実習受け入れと公衆衛生分野での関係構築について、Banchong Mahaisavariya学長と協議を行いました。協議のなかで、今後、医学教育や医療福祉分野の人材育成における協力体制を確立していくことが確認されました。
ブータン王国王立公務員委員会とのMOU締結
タイからブータンに入った高木理事長、鈴木学長は7月11日、教育省を訪問し、ブータン政府から選定された成績トップの学生を本学医学部で受け入れるためのMOUを王立公務員委員会と締結しました。医学部がないブータン王国では、成績最優秀の高校生から40人前後が奨学生として選定され、インド、パキスタン等の近隣国の医学部に留学し、卒業後母国に戻って医師として従事するシステムが確立されています。
そうした進学ルートはあるものの、やはり医師不足は同国にとって深刻な問題です。人口約80万人のブータンですが、医師の数はわずか200人しかいないと言われています。今回のMOU締結により、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー、インドネシア、モンゴルに加え、新たにブータンからの医学部留学生を本学で受け入れることで、同国の医療福祉分野の発展に大きく貢献することが期待されています。
調印式に参加した教育大臣、王立公務員委員会コミッショナーからは、今後のブータンの医学教育と医療福祉分野の発展にとって、本学のIUHW医学部奨学金制度には特別大きな意味があると深い感謝の意が述べられました。
ブータン王立医科大学との学術協定締結
高木理事長、鈴木学長は7月12日、ブータン王立医科大学にも訪問し、同大学との学術協定を締結しました。同大学には、看護公衆衛生学部、伝統医学部、卒後医学部の3学部がありますが、医学部はありません。本学はブータン政府およびブータン王立医科大学からの強い要請を受け、同国初となる医学部設置に向けて協力を行うことが確認されました。また、看護や理学療法などのリハビリテーション分野、さらに公衆衛生専門職大学院での留学生受け入れについても、前向きに検討することとなりました。
初の訪問となったブータンでしたが、各訪問先での協議を通じ、相互の信頼関係が構築されていることが確認されました。医師不足などの課題があるブータン王国から本学に大きな期待が寄せられています。
ベトナム保健大臣ダオ・ホン・ラン氏一行が来日し、7月6日、国際医療福祉大学成田キャンパス、国際医療福祉大学成田病院、山王病院を視察しました。
ダオ・ホン・ラン保健大臣は、国際協力局長、財務計画局長、医療サービス局長、医薬品管理局長同行の下、鈴木康裕学長、坂元亨宇医学部長をはじめとする本学関係者とベトナムIUHW医学部留学生らの出迎えを受け、成田キャンパスに到着しました。
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ベトナム保健大臣を囲んで記念撮影
医学部棟入口の階段で記念撮影を行った後、一行と本学関係者は本学グループの紹介DVDを見ながらランチミーティングを行いました。鈴木学長により、チョーライ病院の経営管理に係る本学の専門教員の長期派遣、同院内に身体障害者支援センターを設立した草の根プロジェクト、本格的な日本式人間ドックセンター「HECI」の開設、学費、教材費、交通費、住宅費までをフルサポートするIUHW奨学金制度とIUHW医学部奨学金制度の設置など、これまで本学とベトナムとの間で教育や医療に関して築いてきた協力関係について説明すると、ダオ・ホン・ラン保健大臣は「本日はこのようなお時間をお作りいただきありがとうございます。また、これまでに国際医療福祉大学の皆様方からベトナムにお寄せいただいた気持ちに感謝いたします。ベトナムでは医療福祉分野における人材育成が重要視されておりますので、今後も協力を得ながら学生を中心とする人材育成に注力してまいりたいと思います」と述べました。
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本学グループ紹介DVDを見ながらのランチミーティング -
本学とベトナムとの協力関係について説明する鈴木学長 -
和やかな雰囲気のなか笑顔がこぼれるダオ・ホン・ラン保健大臣 -
ダオ・ホン・ラン保健大臣から鈴木学長への記念品贈呈 -
Scopeを視察する保健大臣一行 -
説明を受けながら見学する保健大臣一行
昼食後は世界最大級の成田シミュレーションセンターScopeを視察し、一行は成田キャンパスを後にしました。その後、成田病院へと移動すると、吉野一郎病院長や潮見隆之副院長、桐生茂副院長をはじめとする病院関係者と、ベトナム人初期研修医と実習中の5、6年生が出迎えるなか、健診棟の成田国際ホールから視察をスタートしました。健康増進センター、礼拝室、予防医学センター、リハビリテーションセンター、手術室など各施設の説明を受けながら見学した後、一行は成田地区から東京地区・山王病院へと移動しました。山王病院では、藤井知行病院長による案内で院内を見学しました。今回の視察を通じ、一行からは都度質問が出るなど、興味をもって積極的に見学されている様子が見受けられました。
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吉野病院長らの出迎えを受け成田病院に到着する一行 -
ベトナム人初期研修医と実習中の5、6年生らと談笑する保健大臣 -
成田国際ホールで成田病院について紹介を受ける一行 -
高度医療機器についての説明に聞き入る一行 -
テンポよく院内を視察 -
病棟フロアで個室を見学
また、高木邦格理事長との面談においては、ファム・クアン・ヒエウ在日ベトナム特命全権大使も同席の下、今後のベトナムにおける医療福祉分野の発展に対する協力体制につき活発な意見交換が行われました。また、日越外交関係樹立50周年を記念し、9月29日にベトナムホーチミンで開催が予定されている本学主催の国際医療協力シンポジウムについても協力いただけることが確認され、今後もますます本学とベトナムとの協力関係が発展していくことが期待されます。
~世界で最もリハビリテーションの発展に貢献した100人~を受賞(2023年5月21日)
中国障害者連合会主催の国際リハビリテーション100周年を記念して設けられた「世界で最もリハビリテーションの発展に貢献した100人」を選出する企画で、高木邦格理事長が日本を代表する1人に選ばれました。
本学の国際活動において、中国は最も古くから関わりのある国の1つです。
中国との交流が始まったのは1996年、本学が、旧郵政省(現総務省)の通信・放送政策から発足した通信・放送機構(通称TAO)との連携のもと、当時リハビリテーション医療技術分野において発展途上にあった中国およびアジア諸国に対する遠隔リハビリテーション教育を推進するプロジェクトに参加したことがきっかけです。このプロジェクトで、世界初となる「衛星通信によるリハビリテーション教育」の実証実験が行われました。その日本側の拠点として、大田原キャンパスに「那須遠隔リハビリテーションリサーチセンター」が設置され、中国リハビリテーション研究センター(CRRC)に設置された通信衛星システムを利用して実験が行われました。この実験は、のちの中国とアジア諸国のリハビリテーション医療技術分野の発展に大きく貢献しました。
翌1997年6月、中国で開催された「アジア地域における衛星を利用した遠隔リハビリテーションシステムに関する研究開発」の事前調整会議で訪中した高木理事長は、中国障害者連合会の鄧撲方会長(鄧小平氏のご子息)と面会し、今後の中国におけるリハビリテーション医療技術分野の発展について協議しました。
さらに翌年の1998年には、CRRCのリハビリテーション専門職の受け入れを、学費や滞在費など全額本学が負担するフルスカラーシップでスタート。2009年からは新協力意向書を締結し、リハビリ専門職に加え、診療情報管理分野や福祉支援工学分野からの受け入れも開始し、2021年3月現在で、延べ24名の学生を学部・大学院で受け入れました。
また、中国・首都医科大学における理学療法士と作業療法士の養成課程(4年制の「首都医科大学リハビリテーション医学院」)の設立と、一期生が卒業するまでの教育課程を支援する「JICA/中国リハビリテーション専門職養成プロジェクト」(2001年~2006年実施)では、本学より延べ41名の教員を派遣するとともに、首都医科大学から多数の研修スタッフを受け入れました。
現在では、中国出身の多くの本学卒業生が、中国におけるリハビリテーション医療技術分野の責任者となるなど、母国のリハビリテーションの発展に大きく貢献しています。このたびの受賞は、高木理事長が長年にわたり献身的に取り組んできたこれらのプロジェクトが、国際的に広く認められたことの証左となりました。
アジア諸国の医学教育の取り組みと課題を議論する「第2回IUHW国際医学教育シンポジウム」(主催・国際医療福祉大学主催、後援・文部科学省、厚生労働省、外務省、読売新聞社)が3月26日(日)、東京赤坂キャンパスの講堂で開かれました。2018年4月以来の開催となる今回は、2017年4月の医学部開設時に入学した1期生の卒業年度にあたることから、本学医学部の6年間の取り組みも報告されました。
基調講演では、医学教育学の第一人者である伴信太郎・愛知医科大学医学教育センター特命教育教授が登壇。「これからの医療者教育--日本での取り組みと世界の動向--」をテーマに取り上げ、日本の医学教育制度の変遷を説明したうえで、今後の医学教育の方向性について「包括的で患者中心の臨床実践を深めていく必要がある」と指摘しました。
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議論が白熱したパネルディスカッション
医学部を持つ日本、ベトナム、モンゴル、カンボジア、ラオス、インドネシアの計8大学の学長らによるプレゼンテーションでは、最初に本学の赤津晴子医学教育統括センター長が、医学部6年間の革新的な医学教育の実践について報告しました。具体的な成果として、学部生の7人に1人が留学生という欧米の大学と同等の国際色豊かな学修環境、8割の学生が英語による医療面接スキルで英米名門大学の医学部生と同等かそれ以上との評価を受けたこと、日本語能力がゼロだった留学生が日本の医師国家試験に全員合格したことなどを挙げました。他の7大学の学長らは、それぞれの国の医師養成のシステムを説明しました。
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挨拶する本学の鈴木康裕学長 -
基調講演を行う伴信太郎・愛知医科大学医学教育センター特命教育教授
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パネルディスカッションで座長を務める矢野晴美医学部教授 -
司会の赤津晴子医学教育統括センター長
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会場で熱心に耳を傾ける本学留学生ら
3月の医師国家試験に合格したベトナム、カンボジア、モンゴル、インドネシアの4人の留学生も登壇し、世界最大級の施設面積5,338㎡を擁する本学成田キャンパスのシミュレーションセンターにて可能となるアクティブラーニング、90週に及ぶ臨床実習、留学生への日本語教育プログラムなど、本学の特長である医学教育の体験談を率直に語りました。
本学医学部感染症学教授で医学教育統括センターの矢野晴美副センター長を座長に迎えたパネルディスカッションには、伴特命教育教授のほか、プレゼンテーションした8大学の学長らが参加。矢野副センター長が「教育は世界を変えることができる」と口火を切ると、パネリストの間で「医師免許取得から専門医になるまでのプロセス」「日本の医師国家試験合格者の各国における医療実践について」「医師と患者のコミュニケーションのあり方」などをめぐって白熱した議論が交わされました。
最後に挨拶した本学の鈴木康裕学長は、チーム医療を提供していくためにプログラム型で学生を中心に据えた教育の必要性を強調。「現在の医学生はこれから40年間、医療を実践していくことになります。求められる知識、能力との溝を埋めるのは生涯教育だと思います。これはすべての国に共通する課題です」と総括して締めくくりました。