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「くすり」の誕生

「くすり」の進歩

「くすり」による病気の治療や予防は、20世紀後半から進歩をとげ、それまで治らなかった病気が治るようになったり、手術をしなくてもすむようになりました。
しかし、現在でも全ての病気に「くすり」が存在するわけではありません。
そのため、新しい「くすり」の開発は世界中で日夜続けられています。
新しい「くすり」の開発では、病気に効果のある「くすり」を見つけることだけでなく、副作用が少なく、できるだけ安全な「くすり」を見つけることも重要な目標になっています。
また、昨今では遺伝子レベルでの病気の研究の発展により、患者様個人個人にあった「くすり」の開発も行われています。

新しい「くすり」が生まれるまで

新しい「くすり」の開発は、何百何千の化合物や天然物の中から、目的とする作用を持った「くすりの候補」となる物質を選び出すところから始まります。その後、試験用の細胞や動物で、「くすりの候補」の効き目や安全性などを調べる「非臨床試験」を行います。そして、最後に「くすりの候補」が、病気に効果があるか、安全に使用できるかを確認するために、人を対象とした「臨床試験」を行います。これは、試験用の細胞や動物と人の体ではしくみが違っているため、細胞や動物での試験の結果をそのまま人に当てはめることができないからです。

すべての「くすり」は、このように開発されており、化合物等の発見から実際に使用できるようなるまでは9~17年といわれています。

「くすり」の開発に欠かせない治験

「くすり」の開発の最終段階では人を対象とした臨床試験を行います。なかでも、国(厚生労働省)から「くすり」として認めてもらうために行う臨床試験のことを、「治験(ちけん)」と呼びます。

治験は参加された方の人権と安全に配慮しつつ、「くすり」の効果を証明するために必要なデータを集められるよう慎重に計画され、国の定めた厳格なルールにのっとって実施されています。本学のグループ病院でも、様々な病気に対する治験を行っており、たくさんの患者様にご協力いただいています。

新薬誕生までのプロセス

※1 新規物質の探索・創製
薬になりそうな新しい物質を探したり、作り出したりすること。

※2 物理的化学的研究
新規物質の構造や物理的・化学的な性状などを調べること。

※3 薬効薬理研究
どのような効果があるか、どのようなメカニズムで効果を現すのかなどを調べること。

※4 薬物動態研究
どのように、体内に吸収され、臓器などに分布し、代謝されて排泄されるかなどを調べること。

※5 一般薬理研究
どのような部位にどんな作用を及ぼすかなど、薬効薬理作用以外の安全性に関する作用を調べること。

※6 特殊毒性研究
発がん性や胎児への影響がないかなど、特別な毒性(安全性)を調べること。

※7 臨床第I相試験(臨床薬理試験)
少数の健康成人などについて、主に安全性や薬物動態などを調べる試験。

※8 臨床第II相試験(探索的試験)
比較的少数の患者様について、有効性と安全性などを調べる試験。

※9 臨床第III相試験(検証的試験)
多数の患者様について、標準的な「くすり」などと比較して有効性と安全性を確認する試験。

※10 製造販売後調査
製造販売後に多くの患者様に使用されたときの安全性や有効性などの情報を集め、それを分析・ 評価して医療関係者などに伝えること。