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国際医療福祉大学の国際化ビジョン
~IUHWグローバルビジョン2020の策定~

開学以来、国際性を目指してきた
国際医療福祉大学

本学は、1995年の開学以来、「国際性を目指した大学」を基本理念のひとつに掲げ、"国際的センスを備え、いかなる国の人々とも伸び伸びと協働できる真の国際人を育成すること"を目標に、"語学教育などの一般教養だけではなく、専門教育や学生生活を通じて、人間(私人)としても専門家(公人)としても国際的視野を持った人材を育てる"ことを教育理念としてきた。
このような中、本学では、アジア等の発展途上諸国において指導者となる医療福祉専門職の人材育成、世界の医療福祉現場を体験する海外研修の実施、発展途上国への専門家派遣や研修生の受入れを中心とした医療技術協力の提供、アジアを中心とした遠隔診断プロジェクトやさまざまな国際医療シンポジウムなどの国際医療交流事業の実施など、多彩な研究協力や研修活動を通じ、積極的に国際交流や国際医療協力に取り組んでいる。

発展途上諸国において指導者となる医療専門職の人材育成

■中国のリハビリテーション分野の指導者養成

本学はナショナルセンターである中国リハビリテーション研究センターを中核とし、学費から生活費までを本学が負担する奨学金制度を通じ多数の中国人留学生を受け入れ、日本で理学療法士、作業療法士の国家資格を取得させたのち、リハビリテーション分野の指導者として中国に帰国させている。
一方で、教育課程の全面的支援を目的に多くの教員を中国に派遣し、国際協力機構(JICA)とも協力しながら、中国で初となるリハビリテーションの4年制養成大学を2006年に北京に設立、その後は地方のリハビリテーション人材育成のためのモデルシステム構築にも支援を行い、中国におけるリハビリテーションの礎を築き高い評価を得ている。

■国際医療福祉大学(IUHW)奨学金制度の実施

アジア等の発展途上諸国における医療福祉専門職の育成と地位向上を目的に、将来母国で指導的立場となる人材の養成に寄与すべく、2001年以降、アジア出身の特待留学生に対して、学費全額および生活費を中心とした経費などを負担する本学独自の「IUHW奨学金制度」を設けている。
各国の大使館や保健省などの行政機関、アジア婦人友好会との連携のもと、これまでにベトナム、ミャンマー、モンゴル、カンボジア、ラオスなどのアジア各国から多数の留学生を受け入れ、将来各国における医療分野での指導者となる人材を養成している。

■積極的な留学生の受入れ

本学では、日本の医療福祉分野や高度な医療福祉技術を、高い教育レベルで学びたいという留学生を積極的に受け入れており、これまで累計で約280名、この内64名の留学生(学部生35名、大学院生29名)が現在本学で学んでいる。また、経済的理由により学費の納入が困難と認められる留学生に対し、入学金および授業料を50%免除する「学費減免制度」を設けているほか、試験日を年3回設定するなど、財政面・体制面でのサポートも充実している。留学生の多くが日本で国家資格を取得し、国内外で活躍中である。

■経済連携協定(EPA)に基づいた介護福祉士の人材育成

本学は2012年より東京都および首都大学東京と協力し、EPAに基づいて来日したインドネシア・フィリピン、2014年からはベトナムの外国人介護福祉士候補者に対し、本来の実力に見合った国家試験の合格率を得られるように、特別講義および自己学習のための映像配信などによる学習支援事業を実施、候補者全体の合格率向上に寄与している。

世界の医療福祉現場を体験する海外研修の実施

■総合教育科目「海外保健福祉事情」の実施

本学では、約3か月の国内事前研修の後、夏季休暇、あるいは冬季休暇中、必修科目、あるいは選択科目として、約2週間、海外の提携医療機関を中心に患者のケアの補助や医療スタッフのサポートなど、海外各国における医療福祉の現場に直接触れ、貴重な体験を積める「海外保健福祉事情」を実施している。2014年度までの累計で約2,400名、2015年度は約500名の学生がこの海外研修に参加しており、国際的視野の涵養を図っている。
同時に、これらの実施に随行する教員・職員には、各国の教員・職員との教育法などの協議を通じて、国際的ファカルティ・ディベロップメント(FD)、スタッフ・ディベロップメント(SD)を実施し、本学の教育の国際化に寄与している。

■多様な学術交流協定の締結

本学では2016年現在、15か国・27の医療系大学・施設と学術交流協定を締結しており、本学の学生による「海外保健福祉事情」の実施以外にも、韓国、台湾、シンガポールなどの提携大学からも中短期で定期的に学生を受け入れるなど、教員・学生・医療スタッフの相互派遣を積極的に実施している。
こうした提携先との積極的な国際交流は、各国の医療福祉や保健事情の特徴を学べると同時に、国際的視野を持った医療福祉の人材を育てる貴重な機会を継続的に提供している。

発展途上諸国を中心とした医療技術協力の提供

■総さまざまな保健医療協力プロジェクト

本学では、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー、ケニアなどアジアを中心にさまざまな保健医療協力プロジェクトに協力している。ベトナムでは、同国南部最大の拠点病院である国立チョーライ病院の運営管理体制支援に加え、同病院内の障害者支援センター設立プロジェクトにおいては、保健大臣から「国民の健康勲章」を受賞した。また、チョーライ病院の専門医の育成のため、若手病理医を3か月にわたり東京都港区にある本学三田病院で研修医として受け入れ、日本の高度な病理診断技術の研修も実施した。
その他、カンボジアでは、医療技術者養成のために養成学校に教員を中長期で派遣、タイでは寄生虫対策に係る国際研修の実施や、情報ネットワークの構築を目的とした広域技術協力プロジェクトのために専門家を長期派遣、また、ミャンマーでは国立リハビリテーション病院のリハビリ分野でのサービス向上を目的として教員を長期派遣したほか、研修員の受入れを実施、ケニアではケニア国立医療訓練カレッジの教育レベル向上を目的とするJICAプロジェクトを支援し、チームリーダーを含む教員と研修員の受入れを実施するなど、発展途上諸国を中心にさまざまな医療技術協力を提供し続けている。なお、先進国においても、医学系の単科教育研究機関としては世界で最大であるスウェーデンのカロリンスカ研究所と1996年から1998年にかけて、2002年から2005年にかけてはスウェーデン・ゲーテボルク大学と基礎医学分野の共同研究を実施している。また、痛みの研究並びに生理学教科書の執筆者として世界的に有名なドイツ・ビュルツブルク大学のRobert F Schmidt名誉教授や、かゆみの研究で有名なドイツ・エルランゲン大学のHerman Handwerger教授、自律神経系の構築に関する研究で有名なイギリス・ロンドン大学のGiorgio Gabella名誉教授など、これまでに医療福祉の基礎分野で著名な学者を本学にお招きしトップレベルの講義も行っている。
また、国内においては、感染症データ解析の方法や院内感染症監視体制を取得・学習させることを目的に、本学のミャンマー人留学生を国立感染症研究所に1年間研修生として預けるなど、母国における保健医療分野の底上げを目的とした研修も実施している。

国際医療交流事業の実施

■遠隔診断プロジェクトの実施

経済産業省の推進する国際医療交流事業の一環として、本学はこれまで2か年にわたり、画像診断や病理分野の専門家が不足している中国とベトナムにおいて、日本の優れた診断技術と高度な検査機器技術、情報通信技術を融合させた遠隔診断システムの実証実験を実施し、成功させている。2014年度はこの遠隔診断実証実験をミャンマーで実施した。

■国際医療シンポジウムの実施

本学ではこれまでリハビリテーションや医療福祉の分野において、相互理解を深めるための国際シンポジウムを多く企画している。2009年には「日中におけるリハビリテーション医療の現状と未来」を考える日中リハビリテーションシンポジウム、2012年には「医療の情報化と国際交流」をテーマにした国際シンポジウム、2014年にはミャンマーの保健省副大臣、国立医療系大学の3学長を招聘した「ミャンマーと日本の国際医療協力に係る今後の展開」を考える国際医療シンポジウムなどを開催した。

「チーム医療・チームケア」を実践する本学独自のカリキュラム

開学以来、本学は基本理念のひとつである「国際性を目指した大学」の実現に向け、上記のさまざまな国際交流や国際医療協力に継続的に取り組んできた。しかしながら、今後日本に続き世界が直面する超高齢社会の到来と、より高度化・専門化する医療福祉分野の未来を見据えたとき、これからはグローバルな視野をもって活躍できる「医療福祉のエキスパート」となる学生を育成する一方、日本での研修などを通じて、発展途上国における医療福祉系の人材育成の強化を図ることが、本学の基本理念のひとつである「国際性を目指した大学」としての重要な役割と考える。
このような中、「東京2020年オリンピック・パラリンピック」の開催も踏まえ、以下のとおり3つの新たな目標を掲げた「IUHWグローバルビジョン2020」を策定した。

1. 国家戦略特区「国際医療学園都市構想」の実現に向けた国際的医療人材の育成

本学は2016年4月に、千葉県成田市の京成本線・公津の杜駅前に、国際空港を持つ「成田」という地の利を生かし、最先端かつ高度な医療サービスを提供できる専門職、また、将来的には国籍を越えたチーム医療を実践し、国際医療協力にも貢献することができる専門職を養成する、*2学部5学科の開設を計画している。
開設を決めた5学科以外にも、本学は成田市と共同で、国際舞台でも活躍できる医師を育成する医学部の新設、国際基準の医学部附属病院の整備、産学連携による医療機器の研究開発、主に海外医療スタッフを対象とした最先端の「国際医療研修センター」の設置などを盛り込んだ国家戦略特区「国際医療学園都市構想」を内閣府に提案している。
医療福祉分野でもグローバル化が進む中、こうした取り組みを通じ、2020年までに国際的医療人として世界で活躍できる学生を育成するための基盤を強化しつつ、このような学生を育成するのに資する外国人の専任教員の拡充を図る。

*学部構成:「成田看護学部(仮称)/看護学科(100名)」、「成田保健医療学部(仮称)/理学療法学科(80名)・作業療法学科(40名)・言語聴覚学科(40名)・医学検査学科(80名)」
*成田看護学部・成田保健医療学部は2016年4月に開設しました。

2. 留学生の受入れ拡大と日本語教育体制の拡充

2020年までに、累計で約280名の留学生を500名にし、常時留学生在籍者数を学部・大学院併せて現行の64名から100名に増やす。
また、日本語能力が不十分な留学生のために、全学的に日本語教育カリキュラムの一層の充実に努めるとともに、2015年4月に福岡市に開校予定の「*アジア国際外語学院」や大学院東京青山キャンパスに設置予定の日本語教育課程などを通じて本学への留学を誘致し、各国で医療福祉分野での指導者となる人材育成の強化を図る。また、ミャンマーやベトナムといった東南アジア諸国においても現地に日本語学校を設置し、将来的に母国の医療福祉分野の底上げを担う「医療福祉のエキスパート」の発掘を目指す。また、現在大学院で実施している、アジア婦人友好会メンバーである、在日アジア大使夫人向けの日本語教室の一層の充実を図る。
なお、現行の私費留学生向けの学費減免制度の拡充や卒業までの修学をサポートする修学支援体制も全学的に強化する。

*大学グループの学校法人高木学園が運営。進学2年コース:定員40名、進学1年6か月コース:定員20名、日本語一般1年コース:定員20名の3コースを設置。勉強に集中できる環境づくりを提供するため、入学後半年間は学生全員を完備された学生寮に入寮させる予定である。
*アジア国際外語学院は、2015年4月に開校しました。

3. 外国からの研修の受け入れを強化

本学には5つの附属病院に加え、臨床医学研究センターという位置づけにある医療福祉施設が20以上ある。これらの施設を通じ、発展途上諸国における医療福祉レベルの向上を目的とした、人材育成のための短期研修の実施を拡大・強化する。具体的には医師・看護師・医療技術者を対象に、1回5~10名程度の研修を1~3か月間、本学の医療福祉関連施設で実施する。

4. 国際化教育の充実

開学から2014年度までに累計で約2,400名の学生が、海外の医療福祉の現場を体験する総合教育科目「海外保健福祉事情」に参加しているが、2020年までに単年度で1,000名、累計で10,000名に達することを目指す。また、現在は福岡看護学部・福岡保健医療学部のみ必修科目となっている「海外保健福祉事情」につき、2020年までに小田原保健医療学部、2016年4月に開設予定の成田看護学部(仮称)・成田保健医療学部(仮称)も対象とし、将来的には4,200名を超える大田原キャンパスも必修化を目指す。
また、世界で活躍できる医療人材を育成するための基盤を強化するために、学生のみならず教職員への語学教育を充実させると共に、学部・大学院教育における英語による講義・演習の拡充を図る。

*成田看護学部・成田保健医療学部は2016年4月に開設しました。

5. 海外の医療福祉系大学・医療機関との連携拡大や共同研究の強化

本学は現在、13大学、2高等教育機関、2医療機関と学術交流協定を提携しているが、学生の海外研修のより一層の拡充および充実を図るため、2020年までに新たに大学を中心とした10の医療福祉系大学・医療機関と学術交流協定の締結を図り、関連大学との単位互換を促進させる。また、先進国の医療系大学・医療機関との国際的なネットワークを通じ、最先端の動作分析に基づいた医療福祉用具の開発など、革新的な医療福祉技術の共同研究・開発の強化を図る。