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北島政樹学長 退任のご挨拶


(略歴)
慶應義塾大学医学部卒業。ハーバード大学MGH留学。元慶應義塾大学病院病院長、元慶應義塾大学医学部医学部長。第100回日本外科学会会長、第42回万国外科学会会長、国際消化器外科学会会長、日本内視鏡外科学会理事長などを歴任。万国外科学会・米国・英国王立・ドイツ・イタリア・ポーランド・ハンガリー外科学会等名誉会員。19・20・21期日本学術会議会員、欧州科学アカデミー会員。また、世界最高峰の医学雑誌『New England Journal of Medicine』の編集委員を務めるなど、国内外で活躍。ハンガリー・センメルワイス大学名誉医学博士、ポーランド・ヴロツワフ医科大学名誉医学博士。

2009年7月、国際医療福祉大学の学長に就任し、大学の発展に尽力。2016年3月末をもって退任、学校法人国際医療福祉大学副理事長、国際医療福祉大学名誉学長となる。

本学は開学以来、多くの優秀な人材を医療福祉の現場に輩出してきました。2016年4月に開学する成田キャンパスを加えると、大田原、小田原、大川、福岡の5キャンパスに8学部21学科を擁する医療福祉の総合大学となり、さらに現在は、2017年4月の医学部開設をめざしています。私がこの発展著しい大学の学長をお引き受けしたのは、かねがね医師以外のメディカルスタッフの必要性を十分に理解した上で、多くの医療福祉の専門職を養成している本学の教育に大きな魅力を感じたからです。

「チーム医療・チームケア」教育

本学の教育の最大の特長は、「チーム医療・チームケア」の実践を学ぶ関連職種連携教育(IPE:Interprofessional Education)であり、私もこれに力を注ぎました。 第一は、カリキュラムの構築です。全国に先駆けた先進的な取組みとして本学独自に検討を重ねた結果、現在は次のステップで実施しています。1年次は、Early Exposure (早期体験)として、医療福祉施設を見学し、現場の「職種間連携」を学生自身の目で確かめます。2年次は、「関連職種連携論」として、各職種の専門性と関連性、「関連職種連携」の理念、形態、実践方法などを学びます。 3年次は、「関連職種連携ワーク」として、大田原キャンパスの場合、8学科の学生が1人ずつ集まったチームを編成し、そこに1人のチューターがついて、問題解決型体験学習を行います。例えば、「50歳で脳梗塞による右麻痺がある人をどうケアするか」というテーマに対して、学生がそれぞれの専門職の立場から議論を重ねます。2年前からは、ミャンマーやベトナムなどからの留学生も参加し、討議や発表をすべて英語で行うチームも編成しています。4年次は、「関連職種連携実習」として、同様のチームが、医療福祉現場で実際の患者さんや利用者の方々の治療・ケア計画を作成します。 第二は、教科書の編集です。9種類の学科を持つ本学の特長から、「職種間連携」を学ぶために全学部学科が共通で使えるオリジナルの教科書を出版し、授業で活用することで専門の異なる学科の学生たちの相互理解を高められるようにしました。

「将来構想委員会」の設置

本学の将来について議論する「将来構想委員会」を新設しました。各キャンパス、各学科から、講師ないしは准教授クラスが1人ずつ参加し議論する場です。教授ではなく、若手、中堅に集まってもらい、今すぐにできることに加えて、将来構想を検討しています。そこで出たアイデアをもとに始めたのが、薬学部5年次の学生を臨床実務実習に送り出す「実務実習宣誓式(白衣授与式)」です。学生一人ひとりに白衣を渡し、本学の学生であるという帰属意識と、医療者としての自覚を促すことが目的です。

「国際医療福祉大学学会」の設立

「国際医療福祉大学学会」を設立しました。私が学会長となり、毎年8月に学術大会を開催しており、2015年で第5回となりました。学部長や附属関連病院の病院長が交代で大会長を務め、大会長がテーマを決めるため、年によってはリハビリテーションに関係したものが選ばれるなど、テーマが多岐にわたるユニークな学会です。演題数は毎年増え、各キャンパスから学部学生や大学院生、さらには関連病院の医師やスタッフなどを含めてさまざまな立場からの参加があります。他のキャンパスでの研究内容を知るなど、お互いの理解を深めることができるようになりました。

「社会に開かれた大学」として

本学の基本理念の一つが、「社会に開かれた大学」です。その理念の実現に向けて3つのイベントを始めました。 まず、小中学生を対象とした「キッズスクール」です。シミュレーターによる内視鏡下手術や漢方薬の調剤など、さまざまな医療福祉の体験企画を用意しています。最後に私が一人ひとりに修了証を手渡すと、子どもたちは本当に目を輝かせています。2015年で6回目となり、1回目に参加した中学生が、4年後に本学の放射線・情報科学科に入学しました。 次に、65歳以上のシルバーエイジの方を対象とした「幸齢者スクール」です。午前中に講義を行い、午後からグループにわかれて健康体操や体力測定など、医療福祉の体験学習をしていただいます。2015年で5回目となりました。 さらに、「高校生作文コンテスト」は2015年で6回目となりました。本学の建学の精神である「共に生きる社会」について、これをみずみずしい感性でとらえた優れた作品が、海外の高校生からの応募も含めて毎回数多く寄せられています。

成田キャンパス~世界最高レベルの医学部をめざし

「新しいものをやろう」と考えるのではなく、「未来を見据えてやっていく」ことが、私のマインドです。「未来へ向けて今何をなすべきか」、その意味でも、成田キャンパスは未来を見据えた新たな試みです。場所を成田に選んだ理由は、国際空港が近いこと、それから成田市が以前から「国際医療学園都市構想」を検討していたからです。その理念が本学と合致し、「いっしょにやりましょう」と手を組むことになりました。 医学部を新設すると言っても、既存の医学部と同じではなく、国際的なまったく新しい世界レベルの医学部を作ります。今、各医系大学が対応への準備を始めましたが、本学の医学部もWFME(世界医学教育連盟)が定める国際基準に合致したカリキュラムにします。定員は140人を予定しており、シミュレーション教育や臨床実習も充実させる予定です。 また、これに先んじて本年4月にスタートする成田看護学部と成田保健医療学部では、海外実習、海外研修を必修としたカリキュラムを編成しています。

学生の皆さんに伝えたいこと

私が学生に伝えたいのは、「医療福祉の職種は、自分で考えて自分で行動できる人間でなければならない」ということです。そうした人たちが集まれば、どんな激動の時代にも対応できます。だから、「君たちも、自分で考えて自分で行動できる医療福祉の専門職をめざしなさい」ということばを贈ります。このことばを決して忘れないでほしい。

就任以来、みなさんと実り豊かな時間を送ることができました。心より感謝申し上げます。

2016年3月23日
北島 政樹

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